算数から数学へ

算数は苦手、文章題の解き方がよく分からないから。きっと数学も同じだろう。そう考えていませんか? そんなことはありませんよ。数学を学ぶということは、今まで知らなかった「新しい考え方」に出会えるということなのです!

考え方を学ぶ

生徒募集の広告に載せた文章題は、算数の問題としては難問だと思います。解けなくてもがっかりすることはありません。(算数で解けた人はすごい!)

ここでは最初に算数による考え方の例を二通り挙げ、次に数学による考え方の一例を示します。

数学による考え方は数学を学ぶ前に読んでもよく分からないかもしれませんが、算数とは全く違う考え方があるということが分かれば今はそれで十分です。

算数による考え方の例 その1

算数でも数学でも、文章題が分かりにくい時は「絵」や「図」をかいて考えるといいです。そこから何か「ひらめき」を得られることがあります。

まず、弟の「はじめ」と「おわり」の所持金の大きさを図にかいて比較してみます。

上の図で、下段の灰色の部分は弟が使った2,000円を意味します。

次に、はじめの兄の所持金を上の図を使って二通りで表してみます。

上の図は両方とも「はじめの兄の所持金」を表していますが、上段はそれが「はじめの弟の所持金」3コ分であったこと、下段はそれが「おわりの弟の所持金」3コ分と3コの灰色の部分とに分けられることを意味しています。

この下段の図を使って、おわりの兄の所持金を図示します。

この図を見て何かひらめきませんか? 

図には「おわりの弟の所持金」が3コ分入っていますが、問題文によれば、ここには「おわりの弟の所持金」が5コ分入っていなければなりません。ということは、灰色の部分 (2,000円) 3コと14,000円の合計額が「おわりの弟の所持金」2コ分だという計算になります。

したがって、おわりの弟の所持金=(2,000 x 3 + 14,000) ÷ 2 で求められます。はじめの弟の所持金はそれに2,000円を足した12,000円、これが答えです。

算数による考え方の例 その2

別の考え方をしてみましょう。

はじめ、兄は弟の3倍のお金を持っていましたね。もし仮に、弟が2,000円使った時に兄もその3倍の6,000円使ったならば、兄の所持金は弟の3倍のままだったはずです。ところが、実際は兄はバイトをして14,000円お金を貯めたために、兄の所持金は弟の5倍になりました。(「もし……ならば」と現実に反する想像をすることを「仮定」と言います。)

この6,000円と14,000円を合計した20,000円は実際と仮定の差ですが、この差が原因で3倍から5倍になったのですから、合計の20,000円は「おわりの弟の所持金」の2倍に等しいと考えることができます。あとは「その1」と同じ計算です。

例題のような問題はこのように比例の考え方で解けます。これも比の図をかいて考えると分かりやすいので、自分なりに図をかいて解いてみるとよいでしょう。

数学による考え方の例(代数的解法)

まず、はじめの弟の所持金を 円とすると、はじめの兄の所持金は 3 円と表せます。(ここまでは小学6年生の時に習いましたね。)

次に、おわりの兄弟の所持金をそれぞれ を使って表すと

おわりの弟の所持金は ( - 2,000) 円 … ①

おわりの兄の所持金は (3 +14,000) 円 … ②

となります。ここで、②が①の5倍になっていることから次のような式を作ることができます。

(3 +14,000) = 5 × ( - 2,000) … ③

これを解くと = 12,000 (はじめの弟の所持金)が得られます。

なお、③のような式を方程式と言いますが、ここでは方程式を使った考え方のみを提示しました。方程式の解き方(答えを計算する方法)は中1で習います。

一歩踏み出そう

上に示した数学による解き方は、段階を踏んで数学をしっかり学習すれば中学1年の2学期が終わるころにはもう理解できるようになっているはずです。兄弟の所持金の例題のような、算数で考えるのは難しかった問題も「数学なら意外と簡単に解けるんだ」「算数より分かりやすい」などと感じることでしょう。

算数を卒業する皆さんは、これから数学という新しい世界の考え方に出会えるのです。それはとても奥が深く美しい世界です。恐れることは何もありません。期待を胸に、さあ一歩踏み出しましょう、きみを待つ数学の世界へ!